step by step

木曜日の夕方、すべての講義と演習が終わった後が、一週間でいちばん幸せな気分になれる時間帯である。今週もおかげで楽しく講義と演習を終えられた。少しホッとしたところで、こちらでの環境への順応ぶりについて、少し触れておきたい(大学篇)。

 

 

正直なところ、海外にいればわからないことだらけである。ほんの些細なことでも、なかなか当たり前にはできない。毎日一つでも手続きが進み、一つでもできることが増えれば良しとしなければならない。まあ、わかっているんだけど、思うようにはならない。

 

 

大学で与えられたパソコンがまず、うまく使えない。もちろんすべてドイツ語なので、どこかでつまづいても、どこに問題があるのか、なかなかわからない。悪戦苦闘していると、あっという間に時間が経ってしまう。プリンター一つ使えるようになるのに一週間もかかってしまった(各部屋にプリンターがなく、廊下の共用のものに接続しなければならないが、それがうまくできなかった)。

 

 

しかも現在は講義をしているわけだから、時間割から学生名簿まですべてウェブ上にあるものを管理しなければならない。が、誰もそんなこと説明してくれない。学生に読むべき文献を与えるにもBlackboardというサイトにアップロードしなければならないし、学生の受講状況を確認するにもCampus Managementというサイトに行かなければならない。が、実はその存在を知ったのは一昨日のことである。

 

 

別に大学のみなさんが意地悪をしているわけではない。が、みんな忙しいし、そもそもいったん慣れてしまうとその存在が当たり前になってしまうのだろう。よそから来た人にはわからない、ということがわからなくなってしまう。助手さんに聞いても、IT関係に弱いらしく、「サポートスタッフに連絡しておくわ」と言ってくれるが、手取り足取り教えてくれるわけではない。当たり前だ。

 

 

が、ようやくこの数日、実に苦労の結果、コピー機も、スキャナーも使えるようになった。BlackboardもCampus Managementも、なんとか最低限の用がたせるようになった。これがとてもうれしい!資料を共用の機械でスキャンして、自分のPCに転送できるようになった時など、叫びたくなるくらいうれしかった(実はこの作業、日本の自分の勤務校でも結構苦手である)。

 

 

思えば、アメリカのコーネル大学にいる時、結局最後まで、その手のファシリティをうまく使いこなせなかったのを苦い記憶とともに思い出す。まあ、基本的にはvisiting scholarで、講義はほんの数回しかやらなかったので、何とかなったのだろう。しかし、今回はそうは行かない。何としても各種のツールを使いこなさないと、講義すら進められない。いやはや必死である。

 

 

やはり、大切なのは、当たり前だけど、人に聞くことである。わからなくて当たり前、すべて素直に人に聞き、教えてもらったら、感謝する。その繰り返ししかない。そうしてstep by stepで自分のできることが増えていく。どうもアメリカにいた時は、その努力を怠った気がしてならない。

 

 

自分にわからないこと、できないことを、人にお願いして教えてもらわないのは、単に人に聞く勇気がないためである。あるいは、人にお願いする労を惜しんでいるだけである。それは、遠慮でも奥ゆかしさでもない。そのことを改めて痛感する。

 

 

話が飛ぶようだが、日本のおじさんがしばしば傲慢に見えるのは、自分ができないことを人に聞いたり、素直にお願いできないことにしばしば由来するのではないか。できない不安を誤魔化すために、意味不明に偉そうな態度をとってしまうのではないか。そんな気がする。

 

 

その意味で、今回のドイツ滞在では、少しは素直に人にものを聞けるおじさんでいられている気がする(散々、周りの人に迷惑をかけているわけだが)。少なくても、アメリカの時よりは、だいぶ色々なものを使いこなせているのではないか。人間、遅々としてではあれ進歩していると思いたい。