はじめてのドイツ

ドイツに4ヶ月ほど滞在することになった。ベルリン自由大学で講義を行うのが目的だが、実を言うと、これまでの人生で一度もドイツに来たことがない。フランス人によくある偏見で「行くなら南」という発想に影響されたのか、イタリア、スペイン、ポルトガルギリシャには行ったことがあるのに、これまでドイツとは縁がなかった。今回を機に、腰を落ち着けてドイツをじっくり体験したい。

 

意外なことだが、日本からベルリンへの直行便がない。フランクフルトなど経済都市には直行便があるようだが、政治都市ベルリンには、どこかをトランジットして来るしかない。何となくドイツと日本の今の関係を暗示している気がする。

 

今回はフィンランド航空を使ったので、ヘルシンキでのトランジット。空港はすべて英語で、何の不便もない。英語が第一言語と割り切っている印象さえある。これに対し、ベルリンはやはりドイツ語主体。英語表記は少なく、まあ、そんなものかと思った。どこか日本を思わせるものがある。

 

荷物が多くて空港から直接滞在先に向かったので、街の雰囲気はまだわからない。今回の滞在先は旧西ベルリンの郊外住宅とのことで、穏やかな住宅地であり、ほとんど白人しか見当たらない。マルチエスニックなベルリンは明日以降、見て回ることにしよう。

 

大家さんはいかにもベルリンの穏やかな知的階級の人っぽい。いい人で、真面目。並んでいる本を見ると結構文学好きのようである。さて、この滞在中にどれだけ親しくなれるだろうか。この場所で生まれ、育ち、40代を前に戻って来たという。一人暮らしのようであるが、初対面のドイツ人にあまり立ち入ったことを聞くのは如何なものか思い、詳しいことは聞かなかった。

 

夜買い物に出かける。近所のスーパー。要領はフランスとあまり変わらない。その意味では気楽である。ビールとワインを買って帰る。ワインはともかく、ビールが安いなあと感心する。ビール漬けの生活にならぬよう、要注意である。