フランスからの書類

 職場の同僚が「助けて」とやって来た。僕も昔いたことがある、フランスの社会科学高等研究院からインビテーション・レターが来たという。


 その同僚は日本経済史が専門なのだが、一ヶ月ほどフランスに滞在して、講義を行うらしい。問題は、そのインビテーション・レターである。


 いかにもありがちなのだが、手紙はすべてフランス語。同僚はフランス研究者ではないのだから、英語で手紙を書いてきてもよさそうだが、そういう配慮はしないところが、フランスらしい。


 しかも、提出を求めてきた書類が、いかにもフランス官僚主義の権化で、まことにわかりにくい。仏和辞書で必死に一語一語調べた同僚も、さすがに音をあげたらしい。


 いろいろ説明した後、最後に聞かれたのが、署名欄の上にある、「A」 と「Le」。何を書けばいいんだ?と、同僚は途方にくれる。


 何のことはない、「A」 は場所、「Le」は日付である。それでも、はじめての人にはわからないだろう。


 さらに同僚は嘆く。「この書類、昨日来たんだけど、今日が締め切りって書いてある」、、、う〜ん、さすがラテン的官僚主義。事務官もはやくバカンスに行きたいのだろうな。いやはや。