テレビロケ

 うちからさほど遠くないところにテレビ局のスタジオがあるらしい。そのせいか、近所でロケをしているのをよく目にする。今晩も、うちの近所の狭い通りで、たくさんのロケスタッフがひしめいているのに遭遇した。カメラが何台も並び、照明がまぶしい。何人かのスタッフが必死に走り回っているが、その他のスタッフは、雨にぬれながら、無言で待機している。いや、たいへんなものだな、と思った。


 テレビや映画などというのは華やかな場所に見えるが、撮影スタッフの姿は地味そのものである。ひたすら辛抱、に見えなくもない。それでも、大勢のスタッフがじっと長時間労働に耐えている。献身的に走り回っている。そういう姿を見ると、ちょっと感心する。


 学者の仕事なんていうのも、周りから見ると、「よくやるなあ」の部類だろう。


 昔、院生時代、予備校の教師のバイトをしていたとき、合間の時間にゼミの予習をしている姿を同僚に見られたことがある。そのとき、フランス語と漢文の文献を対比する作業をしていたのだが、それを見た理系の同僚は、「ひえ〜、よくやるなあ。そんなことをしなくていいだけでも、理系を選んで良かったよ」と憎まれ口を言った。僕としては、わりと面白い作業をしているつもりだったので、そんなことを言われて心外だったが、研究者なんて、お互い、「よくやるなあ」と思うのだろう。


 なぜか、ロケスタッフの姿を見て、そのときのことを思い出した。