論文集

 自分の論文集を出すことになった。正直いって、そのときどきの依頼で書いた論文ばかりである。まとめたところで、本になるのかなあ〜と、結構不安であった。


 そもそも、僕はものもちが悪い。過去の論文といっても、自分が何を書いてきたのか、そのデータはどこにあるのか、さっぱりわからない。所属先は、毎年、業績の一覧をかなり厳格に調べるところなので、幸いなことに、自分が何を書いてきたのか、書誌情報だけは、わかる。とはいえ、そのどれを探しても、どこにそのデータがあるのか、かなり怪しいのだ。


 やはり、自分はネット時代の人間だと思う。パソコンには、過去の論文のデータなど、どこに残っているか、さっぱりぱりわからない。それでも、G-mailなどを調べてみると、少しずつ、論文が出てくる。そういうのを拾い集めて、なんとか一冊の論文集になるよう、がんばった。


 そうやって、発掘した論文を読み出すと、やはり頭が痛い。註の付け方(昔の論文は思想史風で、最近の論文は社会学風である)がそもそも違うし、それ以外にも不統一な部分が目立つ。何より、昔自分の書いた文章が、今の目からみると、かなり読みにくい。「ああ、だったら、全部書き直す」と言いたくなるが、仕方ない。それから、同じようなネタを何度も繰り返している。それぞれの論文には必要なのだろうけど、一冊の論文集となると、重複はやはり目障りだ。


 それでも、過去の論文を適宜、配列換えし、いろいろ手を入れてみると、自分なりにけっこう面白い。自分はこんな仕事をしてきたのだと、思うところもある。この論文集を通しで読んでくれる読者はどれだけいるのだろうか。


 いろいろ楽しみである。