教師業

 ここだけの話だが、僕はどうも教師業がしっくりこない。


 やはり先生というのは、底なしに人間好きで、深情けであろうと、若い学生さんにコミットできる人が望ましいと思っている。教師は技量より、人柄が大切ではないか。いまでもそう考えることが多い。


 その点でいうと、自分はだめだ。子どもの頃から、どうも動物が苦手だった。かわいがったり、育てたりするのが不得意で、自分のコンプレックスにもつながった。「俺って、やっぱり、優しくないんだよな」といつも思っていた。小さい子の相手をすると、張り切って一生懸命がんばる分、あとでどっと疲れが出た。


 それでも、若い頃は、学生さんと年齢が近いということで何とかなった。感覚の近さで共感を得ることもできた。いま思えば、勢いでごまかしていたのかもしれない。


 ある時期から、「勢いでは何ともならないなあ」と感じるようになった。ちょうどその頃、自身の子どもをもった。「いや、難しいな」と思う方が多かったけど。まあ、それでも、自分を振り返るきっかけにはなった。そうして時が過ぎた。


 いまでは、あらためて、学生さんのことを「かわいい」と思えるようになった(例外もあるが)。ある意味、自分の子どもの世代が多くなったということかもしれない。ともかく、何となく、気持ちが自然に通えるようになった気がする。単なる勘違いかもしれないけど。


 結局、いつの時代も、若い人たちは変わらないと思う。どこまで寄り添って、それでもきちんと言うべきところは言えるか。問われているのは、いつも大人の覚悟だ。


 こちらのメッセージが伝わったと思う瞬間は、やはり格別である。それでも、「伝わるものは伝わる、それでも難しい部分もある」。何となく、覚悟が定まってきた気がする。気持ちが少しでも通じあうように感じられるここ数年。ここいらでがんばるしかない。教師としての重要な時期なのかもしれない。