事件ではなかった

 このことは書くか書くまいか、少し考えたのだけど、まあ、結果としてたいしたことがなかったので書いてしまおう。


 今日の午後、Daichiがかよう予定の小学校に挨拶に行き、校長先生とESL(English as the second language)の先生と会ってきた。二人とも至って親切な女性の先生で、これなら大丈夫かな、と少し安心して、買い物をしてから家に帰ってきた。


 帰ってきた当座は、何か変化があるようには見えなかった。が、買ってきた荷物を家のなかに運びこんでいる最中にふとリビングの窓を見ると、、、何と天井まである大きな窓の全面にヒビが入っている!中心に小さな穴があり、そこから無数の線が窓中に広がっている。


 まず最初に思ったのは、午前中にDaichiとSatoと一緒に庭で遊んだ際にわってしまったのかも、、、ということだった。しかしながら、窓の下を見ると、シートがしいてある。これは午前中にはなかったものだ。その瞬間、「泥棒だ!」と思った。背筋に冷たいものが走り、何か盗まれていないか、家中を探してみる。が、ぱっと見たところ、とくに荒らされた形跡はない。さては、窓に穴を空けて侵入を図ったが、家のなかに入れずに終わったのか、という考えが頭に浮かんだ。


 とりあえず警察に電話する。その上で「どうしよう」とあたふたしていると、10分も立たないうちに、警官が到着する。ブルース・ウィリスを思わせる、がたいのいいタフなおじさん警官である。あわわと必死にそのおじさんに説明すると、ブルース・ウィリスはぽつりという。「見ろ、庭の芝生が刈られている」。たしかに、今朝まで生えていた芝生が刈られている。そうか、泥棒は芝刈りを装って庭に入り、侵入を図ったのだな。しかしながら、ブルース・ウィリスは「いや、芝生を刈っていて石でもはじいて窓を割ったのだろう」などとのんきなことを言う。


 「ええっ、、、」とにわかには信じられなかったが、ブルース・ウィリスは「99.9%間違いない」と確固とした声で請け負う。う〜ん、、、すっかりリラックスしたブルース・ウィリスは、DaichiやSatoに愛想を降り、「なんかあったら、連絡してくれ」と帰っていった。ちょっと安心したような、不安なような、、、


 結局、留守電を聞いたら、家を管理している会社から「芝生を刈っていて窓をわってしまいました。ゴメンナサイ。窓の修理は手配しました」というメッセージが入っていて、一件落着。


 すっかりブルース・ウィリスに心服したDaichiは「やっぱり刑事さんの言うことが正しかったねえ。事件じゃなかったんだ」と感心してつぶやく、。「それに比べパパの推理は、、、」。うぐぐ、何もなかったのでよかったのだ。でも、安心して思わず全身脱力した。