日本酒

 いまどきの傾向であろう、うちの大学の生協書籍部、しばらく前から、店員さんがミニ特集コーナーを作るようになった。いい傾向である。


 特集のテーマもなかなかしぶい。しばらく前は日本酒特集で、日本酒に関する本が並べられていた。いろいろ読んで楽しんでいたのだが、そこで見つけたのが漫画『夏子の酒』である。いまでは文庫版になり、全6巻となっている。


 あまりにも有名なこの漫画について、いまさら紹介するまでもないだろう。コピーライターを目指していた主人公が、故郷の酒造家の実家に帰り、やがて亡き兄の思いを受け継いで幻の稲を復活させ、酒造りに邁進する。日本酒ブームを引き起こす原動力にもなった漫画である。


 で、実はこの漫画を、僕は衝動買いしてしまったのである。ただ、ちゃんと読む時間などなく、本棚に置いたままにしていた。


 が、最近、ちょびちょびと楽しんで読んでいる。「忙しい、忙しい」といいながら、実は漫画を読んでいるのか、というクレームがつきそうだが、まあ、忙しいときほど、他のことをしたくなるものである。


 ある種、スポ根的なストーリーではあるが、静かな説得力がある。日本酒作りの伝統のすごさゆえであろうか。