サンデーとマガジン

 大野茂『サンデーとマガジン』(光文社新書)という本を読んだが、なかなか面白かった。僕はこういう本が好きである。


 少年サンデーと少年マガジン、同時に創刊された二つの週刊誌が、いかに時代のなかで変化し、ある意味、時代とともに化けていったかというライバル物語を描いた本である。


 今でこそ、出版社のドル箱であり、世代別に細かく分かれて発展した漫画誌であるが、はじめたときは海のものとも山のものともわからず、世には「子供向けの漫画雑誌なんて」という偏見も確固として存在した。


 編集者自身、漫画なんて読んだことのない人たちが多かったという。無理もない。漫画の専門家など当時はいなかったのである。素人たちが、時代の波によって、あれよあれよという間に、自分たち自身考えてもみなかったものを生み出してしまうのである。そんなものだろうな、と思う。


 少年漫画誌への協力をおしまなかった長嶋茂雄の話、少年マガジンを買い損ね、編集部まで来てうれしそうに持ち帰った三島由紀夫の話など、ちょっといい話である。


 これはこれで、一つの高度成長時代の日本社会史なのだと思う。