黒澤明

 忙しくときほど余計なことをしたくなるのは、人の性である。昔、とある国際シンポジウムの事務仕事のピークのときに、なぜか小津安二郎の映画にはまって、夜な夜な家でDVDを見た。ただでさえ忙しいのにそんなことをして、死ぬ思いをしたことをおぼえている。


 いまは、あのときほど忙しいわけではないが、それでも日々借金返済に追われている。ところが、どうもこんなときに限って、病気がぶりかえす。こんどは黒澤明である。


 黒澤の映画はフランスにいる頃よく見たのだが(変な話かもしれないが、パリの映画館のうち、一つくらいは必ず黒澤特集をやっていたのだ)、日本に戻ってからは、完全にご無沙汰だった。


 ところが最近、小林信彦の『黒澤明の時代』を読み、がぜん興味が復活した。


 で、今晩は『天国と地獄』を見る。う〜む、黒澤はこんなエンターテイメント作品を作っていたのか(仲代達矢が、かっこいい)。やめられなくなって夜更かししてしまった。


 いやはや、体に悪い。