アメリカ連邦最高裁

 僕がアメリカに来てからはや二ヶ月以上が過ぎたわけだが、この間の時事ネタで一番面白かったのは、アメリカ連邦最高裁の新裁判官人事である。オバマ大統領が指名したエレナ・ケーガンが、さんざん共和党のいやがらせ(厳しい審査?)を経て、ようやく承認された。ハーバード・ロースクールの学部長時代に、軍隊のリクルートに協力的でなかったというのが理由らしいが、まあ、典型的なリベラル派いびりというところだろう。


 ニューヨークタイムズの記事を追っていて面白かったのが、論説記事(著者の名前は忘れた)。今回の人事の結果、最高裁の裁判官からWASPがゼロになったのを受けての記事だった。いまの裁判官にはジューイッシュとカトリックが目立つ。まあ、これも時の流れであろうが、ある意味画期的である。記事の筆者は、WASPの栄光は、WASP以外の人材に地位を譲りつつ、その価値観という点ではしっかりと影響力を維持し続けている点にあるという。何だか、残念がっているのやら、えばっているのやらわからない記事であったが、まあ、WASPの思いを代弁したものであろう。


 もう一個面白かったのが、特集記事で、この数十年間の最高裁の裁判官ごとの思想傾向とその判決を数量的に分析したものだった。その結論によれば、今回、リベラル派のケーガンが裁判官に就任したとしても、同じくリベラル派の前任者を引き継いだだけで、最高裁の大勢を変化させるものではない。むしろ、現在の顔ぶれを見れば、その傾向は第二次大戦後以後、もっとも保守的なメンバーがそろっており、基本的趨勢は保守化に向かっていると分析していた。ふ〜む、そうなのか。


 保守化の基本的趨勢は変わらないものの、その構成という意味では、確実に非WASP化が進んでいる。興味深いポイントであろう。それにつけても、アメリカの連邦最高裁人事の重さを感じる。日本で人事があっても、こういう議論は起こらないだろうなあ、と思う。ま、それがいいことか悪いことかわからないけど。