『アメリカと私』

 アメリカに行ったしわ寄せでどたばたの日々が続いている。が、そんな中、古本屋で手に入れた江藤淳の『アメリカと私』を読んでいる。この本は、知る人ぞ知る、江藤によるアメリカ論であり、プリンストンにおける二年の滞在記である。この本について、僕は、アメリカに行った江藤がナショナリストになって帰ってくる話、というようなイメージを持っていた。が、そのようなイメージはいささか安易ではないか、というような指摘を、プリンストンで会ったRさんも言っていた。というわけで、帰国後早速この本を手に入れ、読み始めたというわけだ。


 たしかに江藤の時代と僕らの時代はだいぶ違う。江藤がアメリカに行ったのは40年以上前のことであり、日本人にとって海外で生活するということが、文字通り「洋行」であった時代の話だ。今読むとあまりにぎくしゃくとし、構えすぎているようにも思える江藤のいちいちの反応も、むしろ夏目漱石の時代に近いのだと思えば、それなりに無理ないともいえる。


 しかしながら、結局江藤が終生それから自由になれなかった、日本とアメリカのあまりに微妙な関係については、江藤の時代から基本的には変わっていないともいえる。ある意味で、ほんとうに真剣にこの二国間関係を考えなければならない現在、この本は意外に示唆するものがあるかもしれない。


 まあ、何はともあれおもしろい。