図書館と松下圭一

 諸般の事情で、戦後日本の政治学文献を読み直している。というか、はじめて読むものも多いのだけど、、、いかんせん、そんなつもりでアメリカに来ていないので、すべてこちらで入手しないといけない。困ったなあ、と思っていたが、調べてみるとコーネル大学の図書館にもかなり収蔵されていることがわかった。


 ここの図書館、なかなかよくできたシステムになっていて、論文は簡単にダウンロードできるし、本も他大学の図書館を含め簡単に転送して、配達してもらえる。イサカの町の図書館も充実しているし、つくづく図書館はアメリカだよな、と思う。


 そんななかで、松下圭一の著作もいろいろ読んでいる。一部の地方自治体関係者の間でカリスマ的存在であるとは聞いていたが、今回あらためて彼の著作を読んでみて、なるほど魅力があると感じた。「集権・官権から分権・自治へ」など、あまりに明快な図式に抵抗のある人もいるかもしれないが、地方自治憲法体制のなかにトータルに位置づけ、文明論的な議論を取り入れつつ、一つのグランド・ストーリーとして語るのは、さすがに読ませる。


 逆にいえば、地方自治を出発点に、日本の憲法体制を根本的に転換させるという意図がすべての著作に込められているのであり、地方自治論が単に地方自治論として終わらない。つねに憲法体制論につながっている。このあたりも著者のファンの多さの一因であろう。


 面白いと思うのは、松下の視点が、かなりはっきりと都市からのものになっている点である。地方へのバラマキを中心とする田中政治的なものとはまったく異質であり、経済的なコスト/ベネフィット的な視点も濃厚である。まずは無駄を削って、それを他にまわすという発想であり、なるほど菅直人の発想もここから来ているのか、と思った。