アメリカ政治思想

 先日、某通信社の記者で、アメリカ支局長をはじめ、アメリカ取材の経験の長いAさんとお話する機会があった。


 このAさん、とくにアメリカ政治思想に通暁され、いくつかの本も書かれている。現代アメリカの政治思想というと、ロールズ中心にリベラリズムの多様な展開を中心にイメージしがちだが、このAさんはむしろ「保守」の思想に注目する。


 といっても、アメリカにおいて保守とは何か、というと難しい。反福祉国家で「小さな政府」を標榜するという共通項はあるものの、ハイエク的なネオリベもいれば、反中央の草の根保守主義も存在する。はたして「小さい政府」かあやしいネオコンのような人たちまでいる。


 Aさんが注目するのは『保守主義の精神』を書いたラッセル・カークの流れ。このカークの本は、バークの政治思想を重視する、現代アメリカ保守主義のいわば聖典のような本だけど、カーク自身は田舎に引き込み、そこで洞窟にこもる仙人のような暮らしをした人だ。ヨーロッパ志向が強く、その意味でも、アメリカ保守主義にあって特異な位置にある。


 その他にも、ネオコンの一つの源泉になったニューヨークのユダヤ系知識人におけるトロツキストの多さなど、いろいろ興味深い話をうかがった。


 う〜ん、アメリカの政治思想も奥が深そうだ。