大平正芳

 京都からの帰り道、福永文夫『大平正芳』(中公新書)を読んで帰る。面白い本だった。

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)


 大平正芳は前から気になる政治家だった。「あ〜う〜」のイメージしかないが、演説から「あ〜う〜」を取ると、理路整然としていたという。クリスチャンだったというのも、面白い。


 この本を読んで、あらためて大平が教養ある政治家だったと感じたし、彼がブレインを集めて作った田園都市構想もなかなかおもしろいと思った。しばしば、大平のブレインは、中曽根臨調ブレインと連続していると言われるが、かなり異質であることがわかる。大嶽秀夫も言っていることだが、大平の目指した路線は「小さな政府」というよりはむしろ増税による「大きな政府」であり、それを文化と生活の充実に回そうとする志向は、むしろ社会民主主義政党的であったとさえ言える。ある意味、中曽根臨調の路線は、このような志向を否定することによって実現したのだとすると、そこで失われた選択肢を思わざるを得ない。


 それにしても、大平の政策研究会に集まったメンバーは豪華である。9巻にわたる報告書を今度読んでみたいと思う。