クローズアップ現代に出演して

 クローズアップ現代に出演した。テーマは「ふるさと納税」。なんでお前が出るのだと言われそうだけど、ともかく出た。緊張した。


 きっかけは担当の若いディレクターの方の相談にのったことだった。彼は僕の『<私>時代のデモクラシー』などを読んでいてくれて、民意が砂状化した時代の民主政治について考えたいということであった。いろいろ雑談の相手になり、結局、自分自身が出演することになったわけだが、昨日のマラソン大会出場といい、緊張するイベントが二日続くとたいへんだ。ちなみにテレビ出演の前にマラソン大会の予定を入れたのではなく、マラソン大会出場を決めていたらその直後にテレビ出演が入ったのである。いずれにせよ、緊張が続くのはよくない。いやはや。


 だいたい、パリのテロ事件に続いてイスラム国の人質事件が起きるというこの緊張時に、「ふるさと納税」というのは、いささかどうだろうという思いがあった。自分が発言すべきは、このテーマか、という葛藤もあった。先週の時点で間違いなく企画は飛ぶと思っていたし、今日だって、何か突発事件が起きれば、7時のニュースがのびて番組中止もありえると思っていた。でもまあ、こういう時代だからこそ、生活に密着した番組をきちんとつくることに意味があるのでは、という気も今はしている。


 印象的だったのは、番組のライブ感。実はかなり番組直前まで国谷さんを交えた打ち合わせが続いた。台本はあったのだが、むしろ国谷さんとの直前のやりとりで大筋が決まったという印象が強い。打ち合わせは7時過ぎまで続き、「え〜、番組、もうすぐ始まっちゃうのに、こんなところにいていいのかなあ〜」と不安だった。それだけ国谷さんは真剣だったし、番組の途中のビデオ放送中も、「ここは、こうしますかね」と相談されてきたのに驚いた。最後の瞬間まで、自分の納得のいく言葉を探している様子がうかがえた。この真剣さこそが、この番組がかくも長く続いている秘訣なのではないか、と思う。でも、ちょっとどきどきしたけど。


 番組終了後、学生時代からの友人で、NHKのディレクターをしている人間と打ち上げ(他の番組の担当だけど)。「番組の最後に、ディクレターから「あと15秒」のサインが出ただろう。一瞬目が泳いだのがわかった」とからかわれた。でも、彼には、「よく、そこからがんばったよな」となぐさめてもらい、「終始笑顔で良かった。わざとらしい笑顔でなく、本当に一生懸命という感じなのが良かった」とほめてもらった。そりゃあ、国谷さんが目の前にいるのだもの。彼女に向かって、少しでも共感してもらおうと思って話せば、まあ一生懸命にもなるさ。


 ちなみに、番組終了直後、自宅に電話したら、小6の長男が出た。「どうだった?」と聞いたら、「緊張してたね」と一言。そうだね、緊張したよ。やっぱり、テレビは魂を吸い取られるな。