家族で被災地に行く

 さて、この夏はどこに行こうか。毎夏いろいろもめて、そしてだいたいにおいて、A-sanーー僕の妻であるーーが最終的に決定する。まあ、毎年だいたいこんな調子であった。ちなみに昨年は北海道に行き、道東をぐるりとまわった。なかなかに壮大な計画であったと思う。


 が、今年は、A-sanの仕事が忙しくなり、そもそも夏に長く休みがとれないということがわかった。それでもキーコンセプトは示してくれて、「今年は東北に行こう」ということになった。僕は基本において、すべてA-sanに反対しない。だとすれば、僕がいつも行っている釜石に、一度はみんなを連れていきたい、そういうことになった。


 とはいえ、子どもに被災地を見せるというのは、難しいことだ。いまどきの小学生は「ヒサイチ」という言葉をよく知っている。Daichiに「この夏は釜石に行くぞ」といったところ、「えー、ヒサイチか、、、」という反応であった。あまりポジティブな感触ではない。


 彼だってソレなりにいろいろ学んでいる。今回の震災と津波で、どれだけ多くの被害があったか、被災地でいまなお苦しんでいる人々がいることは、知っているはずだ。でもまあ、反応は「えー、ヒサイチか、、、」なのである。


 むりやり、「これが被災地の現状なのだ」「キミも、東北の復興のために貢献しなさい」といっても逆効果であろう。まあ、現地を見せるしかない。それで何かを感じてもらうしかない。直ちに影響はないだろう(あまり心理的プレッシャーをかけるのは本意ではない)。親の自己満足であると知りつつも、それでも、、、ということで、今回の釜石ツアーがはじまった。


 釜石の市街を見せ、そこから北上した。被害の大きかった鵜住居や、壊滅的なダメージを受けた大槌もまわった。僕らがいつも泊まる旅館にとまり、その女将さんの話も聞けた。それなりのことはしたという気がする。


 それでもまだ、迷いは残る。これでよかったのかな。やはり親の自己満足以上のものではなかったのかな。何だか、とても間違ったことをしてしまった気もする。それでも、やはり父親が足しげく通う町のことを知ってもらったことは、けっして無意味ではなかったと思いたい。いまのところは、そんなところ。