交遊関係

 MさんとKさんという友人がいる。けっこう前からの知り合いである。


 といっても、しょっちゅう会っているわけではない。1年か2年に1回、むこうから突然連絡が来る(僕は基本的に受け身なのだ)。それで会って、2〜3時間くらい話をして分かれる。まあ、その程度の付き合いである。


 二人とも優れた研究者である。名前を書けば、「ああ」という人も多いはずだ。


 しかし、この関係、どうも非対称的である。実際、話をリードしているのは、つねに彼らである。僕は、「へえっ」とか「ほえっ」といいながら、感心して聞いている。思えば彼らから、かなり知的影響を受けた気がするが、彼らに影響を与えたとは思えない。


 おそらく、この二人にとって、僕はちょうどいい聞き役なのだろう。僕は適度にものを知っていて、適度に知らない。彼らの話を理解する程度の知的能力はもっているが、彼らに「それでは教えてあげよう」と思わせる程度には無知である。


 二人は、読んだ本の話、いま考えているアイディアを惜しみなく聞かせてくれる。実際、面白いのだ(だが、彼らが薦めてくれた本を読むと、その本より、彼らの解説の方が面白いことが多い)。話すだけ話すと、彼らは機嫌良く帰っていく。


 最近、この二人からそれぞれ連絡があった。まだこの関係は続いているのだな、と思って不思議になった。