何に依拠して論じるか

 先日、井上寿一さんの『吉田茂と昭和史』のなかで、やたらに山田風太郎が引用されているのが、なんだかミスマッチのように感じられて面白いと書いた。


 それと同列には扱えないのだけど、高原基彰さんの『現代日本の転機』を読んでいると、とくに90年代以降の分析において、大嶽秀夫『日本政治の対立軸』に大きく依拠しているのが、何となくミスマッチとは言わないが、意外な感じがして面白かった。ちなみに高原さんの本には、うちの研究所の『20世紀システム』や渡辺治さんの本も出てくる。何となく、このあたりの本のセレクションには意味がある気がする。


 ある人の本を読む場合、その人が明示的に主張している部分以上に、依拠している文献や資料の方が何ごとかを語っている場合がある。ちょっと気になる。