ある講演

 東京JCのOB会から講演の依頼をいただく。任にあらず、という気がしたが、たいへん熱心にお誘いいただいたのと、会のこれまでの検討の記録をいただき、その真剣さに強い印象を受け、結局、お引き受けしてしまう。


 行ってみると、それほど広くない会場のなかは人でいっぱい。聞いてみると、東京の都心部を含め、関東周辺の町おこしを担われている方々が多い。こりゃあ、たいへんなところに来てしまったと、少々後悔する。こういう方たちを前に、僕に何を話すべきなのか。


 ご依頼いただいたのは、昨年日経に連載したコラムの話を中心に現代民主主義論、ということであったが、こういうメンバーなら、ということで、釜石調査の話から始める。


 正直いって、僕は地域おこしの専門家ではないし、知っているのも、釜石をはじめとするいくつかの地域に過ぎない。いや、これらの地域にしても、「知っている」といえるかどうか、、、


 ところが、話をしていくと、意外に、うなづいてくださる方が多い。釜石と、東京の都心ではまったく状況が違うが、それでも、通じる部分があるのだろうか。


 結局、釜石の話から、話はアダム・スミス、そしてトクヴィルと展開する。われながら、こういう話をするとは思っていなかったが、結果的にはそれほど、不自然ではない話をできたと思う。


 終わってみると、「日頃、思っていたことを認めてもらった気がする」という声を多くいただいた。


 まあ、いい経験であった。そして鍛えられた。いや、ほんとうに。