人にすすめられた本3冊

 天の邪鬼で、人に本をすすめられると、どうも読まない。でも、最近、人に紹介されて読んでいる本3冊。


 

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

シリコンバレーから将棋を観る―羽生善治と現代

 最初の本は、梅田望夫の本。誰にすすめられたかは忘れた。正直いって、この人の本、ちょっと苦手である。なんで苦手かといわれると困るのだが、ともかく苦手である。でも、この本は、彼の将棋への愛がにじみ出て、悪くない。現代将棋は、情報化により、あらゆる戦法が研究され、その情報は広く公開されている。そうだとすれば、将棋の勝負も、一定のところで似たような水準の指し手による星のつぶし合いになりそうだが、しかし、それでも勝っていく棋士がいる。羽生をはじめとする現代棋士の、ぎりぎりの模索を考察する本である。


 

 これはN出版のSさんのご推薦。いまや、伝説となった、東大におけるジャズの歴史と理論をめぐる講義が文庫化された。現代音楽における記号化が極限まで進んだ結果、逆に、このコードさえ守ればあとは自由、という逆説的な音楽の自由が生まれた。その自由の結果可能になったものとして、モダン・ジャズを捉える。議論はひどく抽象的であり、理論的であるが、抽象的であり理論的な議論こそ、実は多くの人々を興奮させるという、稀有な実践例である。


 

八月のトルネード

八月のトルネード

 同僚のGさんのおすすめ。ストイックで孤高の人野茂英雄をめぐるノンフィクション。Numberの記事をもとにしているようだが、他の2冊と同様、野茂という人は、求道的で理論的にみえる。野茂はいったい何を追い求めたのか。考えさせる。



 ぎりぎりのところで、理論的な模索を続ける人間に、ジャンルを問わず、あこがれを感じる。その美しさに、あこがれを感じる。自分は、そういうタイプではないと知りつつも。