3月

 3月というのはお別れの季節である。大学も例外ではなく、毎年、多くの人が大学という場から去っていく。僕のいる職場は研究所なので、学生さんはいないが、それでも毎年少なからぬ人の出入りがある。


 大学の教授会というのは、意外と構成員が変化するものである。最初に挨拶するときは、見知らぬ人々を前に緊張するが、数年もたつと、自分より後に赴任した人の方が目立つようになる。


 今日、送別会があったのは、僕がこの職場に来たとき、研究所長だった先生である。それ以来、何だかんだでお世話になってきた。僕にとって、研究所を象徴するのはこの先生であり、その先生がいなくなって自分が残るというのは、ちょっと変な気がする。さびしい気がする。


 すっかりメンバーが入れ替わってしまっても、組織は組織、外から見れば変わりはない。あたりまえでもあるけど、何だかとても不思議な話だな、と思った。いや、素朴な感想で恥ずかしいんだけど。