本好き青年

 親戚の子が就活で相談があるというので、会うことにした。いや、正確には、彼ではなく、彼の母親と、彼の祖母からの依頼である。


 たしか彼が中学生に入ったばかりの頃に会って以来である。その彼が就活とは、、、いかにもおとなしそうだった少年が、ずいぶんとしっかりとした、元気そうな青年になっていた。


 本が好きで、出版社に就職したいという。「本が売れない、売れないと言われるいまどきに、なんで?」と聞くと、電子書籍の展望を話してくれる。卒論のテーマということで、「日本人はけっして読書離れしていない」と、なかなか雄弁に論じてくれる。なるほど。


 「最近、何読んだ」と聞くと「蟹工船」。でも、「学術書、、、たとえば思想とか哲学の本って、読んだことがある?」と聞くと、「ありません」と、朗らかに答える。


 僕の周りにいるのとはちょっと違うタイプの本好き青年。でも、小一時間ほど話してみて、何となく、現代の読書人のイメージがつかめた気がした。