『高原好日』

 福井への往復で、加藤周一の『高原好日』(ちくま文庫)を読む。

高原好日―20世紀の思い出から (ちくま文庫)

高原好日―20世紀の思い出から (ちくま文庫)


 加藤の軽井沢での交友録であり、仲間である福永武彦中村真一郎はもちろん、堀辰雄丸山真男朝吹登水子、、、と続く。最後は意外にも樋口陽一


 昔、単行本で読んだときには、ぱらぱらと拾い読みをした程度で、「軽井沢ねえ〜、ふ〜ん」とたいした印象は受けなかった。


 今回、通しで読んでみると、友人を語ることを通じて、加藤は自らの思想を真っ正面から展開していることがわかる。言い換えれば、彼の思想は、彼の友人関係において、もっともよく表現される、ということでもある。


 本書の登場人物のほとんどは、故人である(そして、加藤自身逝ってしまったわけだが)。彼らを語る加藤の口調は、どうしても、過ぎ去った時代へのノスタルジーにみちたものになる。


 加藤はおそらく、これらの人々への友情を裏切らないためにも、自分は発言し続ける義務があると考えていたのだろう。そういう意味で、加藤がその人生の最後の時期に何を考えていたのかを知るための、よい入り口になる本だと思う。