入門書

 許光俊という人の『クラッシックを聴け! 完全版』(ポプラ文庫)という本を読む。前にこの人の『世界最高のクラッシック』という本を読んだことがあるが、そのときもなかなかの才人だと感心した。


 先日、美術館は神なき時代の宗教である「文化」の神殿である、という話を紹介したが(http://d.hatena.ne.jp/Shigeki/20081210)、この本もまたクラッシック音楽を、基本的には神なき19世紀のブルジョワ社会が生み出した疑似宗教とみなしている。その意味で、クラッシック音楽はすでに「終わっている」のであり、本の基本的トーンは皮肉にみちている。しかしながら、巻末の解説で齋藤美奈子がこの本が皮肉なわりに適度に「啓蒙的」であると書いているが、まさにそのバランスがとれた本であり、ある意味でいい入門書なのかもしれない。


 ちなみに齋藤美奈子は、この本と同じパターンで、文学でも哲学でも入門書が書けるのではないか、という。そうかなあ。政治思想史も、このパターンで書けるかな。政治思想史はすでに「終わっている」と宣言する、皮肉なスタンスではありながら、適度に啓蒙的な内容の政治思想史入門。基本的に認識は暗いのだが、文体は妙に明るい。う〜む、何だか、感じの悪そうな入門書になりそうだ。