芸術崇拝

 しばらく前に、本屋で松宮秀治という人の『芸術崇拝の思想』(白水社)という本を手に取った。

芸術崇拝の思想―政教分離とヨーロッパの新しい神

芸術崇拝の思想―政教分離とヨーロッパの新しい神


 西洋社会における芸術崇拝の思想を、近代国家における政教分離原則の問題とからめて論じようとしている点が面白いと思ったのだ。


 いかにもマイナーな本であり、買おうか買うまいかしばらく考えたけど、結局買うことにした。読んでみてびっくり、期待に反せずおもしろい。「芸術」なる発想は普遍的なものではなく近代西欧の創造物であること、ミュージアムは国民国家における神殿であること、啓蒙主義ロマン主義はけっして対立物ではなく、実はコインの表裏であることなど、興味深い論点が続く。


 へーと思っていたら、先日、朝日の書評欄で柄谷行人がこの本をとりあげていた。う〜む、柄谷行人、なかなか気が合うぞ。