加藤周一
加藤周一さんが亡くなった。「さん」とつけるのは、二度ほど会ったことがあるからだ。
大学院生の頃か、教員になってはじめの頃だったと思う。友人のMさんが加藤さんのところに出入りしていて、「一緒に会わないか」と誘ってくれたのだ。
最初は広尾の都立中央図書館、加藤さんはここの館長していた。二度目は自由が丘だった。
正直なところ、何の話をしたのかは、あまりよく覚えていない(フランスの核実験の話をしたような気がする)。
覚えているのは、お年の割によく食べる人だ、という記憶だ。それも肉をよく食べる。食通で血色のいい人だった。
あと覚えているのは、態度というか、振る舞いというか。いろいろな人が書いているが、気さくで、偉ぶらない人だった。話し方も、永遠の書生という感じだった。
精神の自由を保つため無所属を貫き、知的関心のために生きていく、そういう意味で、たしかに書生の空気を持った人だった。合掌。