『十五少年漂流記』

 Daichiをインフルエンザの注射につれていく。病院の控え室に『十五少年漂流記』があり、ついつい読んでしまう。


 原題は『二年間の休暇』、フランスのジュール・ヴェルヌの冒険小説である。15人の少年が漂流し、たどりついた無人島で二年間を過ごすという話だ。


 昔読んだときは気づかなかったが、少年たちは、いろいろな国の出身者が混じっている(ニュージーランドのインターナショナルスクールという設定)。主人公のブリアンはフランス人、ことある事に彼と衝突するライバルのドノバンはイギリス人だ(ちなみに、少年たちの中では、イギリス人が多数派である)。


 しかし、漂流した少年たちが実に落ち着いているのはともかく、まず島の名前を定め、大統領を選出するというのがすごい。初代の大統領は年長で、落ちついたアメリカ人少年ゴードン。二代目の大統領はフランス人のブリアンである。フランス人主人公のライバルがイギリス人というのはいかにもだが、アメリカ人は別格ということか。ブリアンとドノバンが喧嘩するたびに、アメリカ人のゴードンが仲裁に入る。ふ〜む、この頃から、アメリカにそういう役割が期待されていたのか。


 子どもたちが無人島に漂着して、まず最初にするのが国家設立というのは、なかなか考えさせるものがある。日本の冒険小説ではまずありえない話だろう。黒人の召使い少年に選挙権はないなど、政治学的につっこみどころ満載である。


 子どもの頃好きだったこの本。いま読んでみても、あらためて関心のそそられる本だ。