龍と春樹

 清水良典『MURAKAMI』(幻冬社新書)は意外に面白い本だった。村上春樹村上龍を並べて論じるというのは、W村上といった時代ではあるまし、一見ぱっとしない気がする。しかしながら、この本は、「あえて」それをすることで、意外に面白い同時代史になっている。


 というのも、二人の村上の作品を並べていくと、思いがけず、同時代性というか、ある種の時代との共振が見られるからである。近いところでも、『アンダーグラウンド』と『JMM』、『海辺のカフカ』と『希望の国エクソダス』を並べてみると、何かしらが見えてくる気がする。


 驚くような議論は出てこない。だが、二人の作家を通じて、同時代史を描き出すという試み自体は、なかなかうまくいっている気がするけど、どうだろう。