社会主義2題

 好きではない書類書き。でも嫌いだからといって、逃げるわけにもいかない。なんとか必死に項目をうめていくが、ついつい他のものに目が行ってしまう。


 関川夏央谷口ジローの『「坊ちゃん」の時代』第四部「明治流星雨」。幸徳秋水荒畑寒村ら、明治社会主義者たちが主な登場人物であるが、大逆事件をクライマックスとするストーリーの真の主人公は菅野須賀子である。秋水や寒村らは、むしろ彼女を囲む男たちの一人として描かれている。それはともかく、彼女・彼らの悲劇こそ、関川らの描く明治思想史の一つの基調となっており、彼らのねらいが単に明治的なものをノスタルジックに描くものでないことはうかがえる。。


 一方で、市野川容孝『社会』(岩波書店)を読み始める。「社会的なるもの」の思想史であろうと予測していたが、意外なことに、話は日本における社会主義社会民主主義)政党史からはじまる。著者の問題意識は、かつて近代日本の政治史において重要な意味を持った「社会」が、現在ほとんど消え去ろうとしていることへの危機感にあるのだろう。共産主義との関係ではなく、むしろリベラルとの関係において「社会的なるもの」を倫理的に再定義し、それをデモクラシーと結びつけることで、社会民主主義の現代的意味を主張しようとしているように見える。わからないではないし、共感しないでもない問題意識であるが、本のテーマからいって、ちょっととまどう導入部ではある。この議論が後にどう生きてくるのか、、、、