感情移入

 ここ数年、なんだか自分にとって急に「懐かしい町」になってしまった場所がいくつかある。岩手県の釜石などもそうだが、島根県の浜田にもかれこれずいぶん訪れた。


 というわけで、浜田周辺をロケ地にした映画『天然コケッコー』を見る。同名の少女漫画の映画化であるという。浜田周辺の、小中あわせて6名しかいないような地域に、東京からの転校生の男の子がやってくる。自分を「わし」と呼ぶ、地元の女の子を主役に、これといった事件もなく、たんたんと進む映画である。それでも、映し出される風景をみていて、なんだか無性に「懐かしい」気分にさせられる。


 あの辺りの日本海の風景は独特である。とても美しいのだが、なんだか人っ気がない。わずかな平地を海岸ぎりぎりに鉄道が走っていく。家の屋根は石州瓦のオレンジ色が続く。


 そんな風景に思わず魅入ってしまう。まあ、たかだか数回訪れた場所への、根拠もない感情移入ではあるのだが、、、