『東京奇譚集』
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11/28
- メディア: 文庫
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親に愛されなかった子ども、子どもを愛せない親、人はしかるべきときに愛され損ね、また愛し損ねることで、傷つく。そういうトラウマをもった主人公たちの短編集。
でも村上のものらしく、作品はどろどろしておらず、あくまで清潔で、淡い。このあたりが批評家が村上を批判する点であるし、逆に村上に対する需要の源泉の一つであろう。
損なわれた主人公たちは、それでも生きていく。結末はどれも(村上にしては)相対的にハッピーなものである。一人ひとりの心の傷の背景には社会的なものもあるが、村上はことさらに強調しない。ただ、ところどころに点のようにちらすばかりである。
まあ、いろいろな意味で、今の村上らしい作品といえるか。