引っ越し初日

 本日は研究室の本の梱包と書架の解体作業の日である。


 いつも思うけど、日本の引っ越し業者というのは、えらいものである。ややこしい作業に文句もいわず、手際よくこなしていく。フランスだとこうはいかない。こちらの語学の問題もあるのだろうが、そもそもシステマティックにはできていないのだ。搬送中に、荷物が一つ行方不明なんていうことも、珍しくない。


 今回の引っ越しは、荷物の一部は退避先のプレハブへ、残りは倉庫に送られる。ややこしいのだ。にもかかわらず、こちらの注文にきちんきちんと対応してくれ、しかもスピーディーに仕事をしていく。


 働いているのは20代の男性中心か。やや年配の人もいるようだ。汗水たらして働く人のそばで、自分だけ体を動かさないのは、なんとも居心地が悪い。じゃまにならないよう、はじっこで小さくなっている。


 ところが、こういう日に限って、いろいろお客がやってくる。なんと、いきなりフランスからの友人まで現れる。にぎやかな引っ越しになった。


 みんな嵐のようにやってきて、嵐のように去っていった。作業が終わり、山積みの荷物に囲まれた部屋に夕方一人ぽつんと残され、なんだかぼんやりしてしまった。