アジアのなかの日本

 宮城大蔵さんの『「海洋国家」日本の戦後史』(ちくま新書)を読む。たいへん、面白かった。

「海洋国家」日本の戦後史 (ちくま新書)

「海洋国家」日本の戦後史 (ちくま新書)


 第二次大戦後のアジアにおいて、日本はいかなる位置をしめたのか。アメリカの核の傘の下、なんら主体的な役割をはたしえなかった、というのが通念であろう。本書は、バンドン会議インドネシアをめぐる国際関係における日本の位置を新しい資料を使いながら再解釈することで、このイメージを覆していく。


 日本は大状況を決定するアクターではなかったが、とはいえ、かなり重要な役割を果たしていた、というのが、本書の結論である。アジアを、イデオロギー対立の舞台から「開発」の地域へと転換させていくにあたって、日本はかなりの程度、自覚的に行動し、かつ一定の効果を持ったと著者はいう。ただし、そのことは「日本もやるじゃん」という話になるのではない。むしろ、スハルトの大虐殺を黙認し、反共の砦として意図的に行動した日本という、別の一面が浮かび上がる。


 もう一つの大きなストーリーの主人公は中国である。本書を読むことで、現在の中国の台頭について、より大きな視点で捉えることが可能になるだろう。


 スケールの大きい外交史、という読後感である。