『コスモス』

 昨年、実家を取り壊した際に、自分の昔の本から何冊かをピックアップしてきた。そのうちの1冊に、カール・セーガンの『コスモス』がある。


 僕らが小学生の頃、セーガンが自ら出演する、アメリカ製作の同名の科学ドキュメンタリー番組があり、日本でもたしかテレビ朝日で放送された。この本は、その番組をもとにしたものである。


 この番組は僕らを実に魅了した。今では珍しくない科学番組だが、宇宙の歴史、生命の発展などを、実に壮大かつエレガントに解説する番組として、記憶に残っている。


 久しぶりに読んでみて、やっぱりうっとりするなあ、と思った。生物の進化に対する人間の意図せざる介入を説明するために、日本の平家ガニの例を持ち出し、『平家物語』の安徳天皇入水のシーンを引用する。実に文学的である。


 読んでいて、番組に魅了されていた頃の、科学少年だった自分を少し思い出した。