書評

 某雑誌のために、バラク・オバマの『合衆国再生』の書評を書く。いちどきちんとオバマのことを書こうと思っていたのでいいチャンスだ。しかも、4000字。日本の書評としては長めであるのも、ありがたい。


 この本の魅力を説明するのは難しい。彼の経済政策、人種や宗教政策、そして外交政策は、まあ、なんというか、とても一般的である。おおよそ、いわゆる「リベラル」の枠内で理解可能である。市場に対して国家の一定の介入を認め、自由市場よりセイフティーネットを重視する。外交についてもイラク戦争を批判し、国際協調主義である。でも、この本の魅力は、そういう話とは違うレベルにある。



 生き生きしているのは、人の描写。近所に住んでいて、少年野球のコーチをしていて、自分の家の庭でバーベキューをするのが好きなおじさん。これがブッシュ・イメージである。オバマに言わせれば、ブッシュは、政治の話さえしなければ、いかにもいいおっさんである。議会のベテランで、合衆国憲法の生き字引である、民主党長老のバード議員の描写も、なかなか泣かせる。


 前にも書いたと思うけど、家族の話を書くオバマは、僕らと同じ。あんまり自信がなく、日々迷いながら、それでも親であることを大切に思う、一人の人間としての等身大の姿が描かれる。ここらあたりは、とても好感を持てる。


 じゃあ、結局、この本の魅力は何なのか。そこが難しいんだけどね。まあ、なんとか、オバマさんという人のもつ不思議な求心力を、読み解きたいと思っている。