場違いかな?

 「鶴見和子さん一周忌の集い」に出席する。が、考えてみると、なぜ僕が鶴見さんの一周忌の企画に参加するのか、よくわからない。もちろん僕は鶴見さんと生前お会いしたことはないし、鶴見さんの本を全部読んでいるわけでもない。父親が鶴見さんと親しかったこともあり、小さい頃から名前はよく耳にし、なんとなく親近感を持っていたが、かといって、一周忌の企画に参加するほどの関係があるわけではなかった。


 ただ、なぜか理由はわからないが、主催の藤原書店で何回か仕事をしたことがあるので、たぶんそのリストに名前が入っていたのだろう。招待状をもらって、なんとなく出席に丸をつけてしまったのだ。


 今日会場に行ってみると、ある意味、予想された事態ではあったが、会場にはほとんど知っている人はいなかった。だいたい高齢者の方が多く、僕のような世代の人間はほとんどいない。これは場違いなところに来てしまったとちょっと後悔した。唯一、職場の同僚一人をみつけ、やれうれしと話しかえると、「なんで君が?」。そうね、なんで僕がここにいるんだろう。


 ということで、知っている藤原書店の編集者の方などと、おしゃべりしていると、先ほどの同僚が「U野C子さんいるけど、話す?」と声をかけてくれる。僕は恥ずかしがり屋のくせにずうずうしいところがり、「話す話す」と言ってしまう。ということで、あのU野C子さんと話すことになった。何しろ彼女のところにけんかの仕方をならいに行く人もあるということだから、さぞや怖い人かと思ったが、会って話してみると、きっぷのいい、話のおもしろいお姉さんという感じ。政治学者だと自己紹介すると、「明日の選挙がどうなるか、政治学者なら分析してごらんなさいよ」と言われ、へどもどするが、思いがけず長話をしてしまった。


 会の締めのスピーチは、鶴見さんの弟である俊輔さん。せっかくなので挨拶してみる。たいした話はしなかったが、いたずら坊主がそのまま年をとったような、おもしろいおじさん、という感じだった。ちゃっかり、自分の本を進呈する。


 いや、思いがけず、いろいろな人と話せたのだ。たまには、「自分には場違いかな」という企画に出てみるのも、おもしろいかも。