伝統

 今晩の『情熱大陸』ではアレックス・カーという人をとりあげていた。東洋文化研究家ということだが、京都の町屋や四国の山奥の家屋を再生して宿泊施設として活用したり、古美術を扱ったりしている人らしい。なんどか名前を耳にしたことがある人だが、今日までどんな人なのかぴんと来なかった。


 伝統的な建築、町並み、風景を大切にせず、それをひたすら破壊し続ける現代日本社会の文明のあり方と、その精神を厳しく批判する。まあ、そんな風に書くと、いかにもな人を想像してしまうが、その人となりは落ち着いて、語り口は説得的である。


 「古いものを残していないから、いけないんじゃない。新しいものがあまりにつまらないのだ」とか、「現代建築の便利さの方が大事だというけと、実はそれがあまり便利でないことが問題なのだ」という言葉は、なかなか痛快である。「伝統的なものをただ保存すればいいのではなく、むしろビジネスとして、現代のニーズに応えていくことが大切だ」というのも、一理ある考えだと想う。あくまで現代的な生活の機能連関の中に、いかに古くからのものの持つ意味を回復させるか、その営みこそが「伝統」を形作っていくのであろう。