旅の演歌歌手

 昔、フランスにいた頃出たゼミでは、4月過ぎになるとやたらに「スペシャル・ゲスト」が登場した。前年秋にはじまったゼミもこの頃には、ネタ切れを起こしていたのだろう。次から次へと人を呼んで、なんとかしのぐ、というわけだ。


 それと同じ、といっては失礼ながら、僕も「一度ゼミに来て話さない?」というお誘いを、最近受けることが続いている。しかも、「本も出したことだし、それをテキストにするといいねえ〜」などと言われると、こちらとしてもまったく断る理由はない。共存共栄である(テキストを買わされる学生さんをのぞく)。


 しかしながら、そのような自分の姿は、売れないCDをかかえて酒場のドサまわりをする演歌歌手にも似ている気がする。気のせいだろうか?