『社会』

 

社会 (思考のフロンティア)

社会 (思考のフロンティア)

 恥ずかしながら白状するが、前にこのブログでも取り上げたことのある市野川容孝さんの『社会』、いきなり社会民主主義政党史の叙述が続いたことに面食らい、途中で放り投げてしまった。が、今回必要があって、もう一度読み直し、今度は最後まで読んで、とても優れた本であることに遅ればせながら感銘を受けた。


 市野川さんの社会民主主義へのこだわりは、「社会的なるもの」をあくまで「民主主義」の徹底によって実現しようというプロジェクトに対するコミットメントによる。そのような見地から市野川さんは、議会制というブルジョワ的制度を、ブルジョワの手から奪い、ブルジョワ以上に純化しようとしたローザ・ルクセンブルグを再評価する。


 さらに本書の後半では、「社会的なもの」の本質を、平等に対する規範的な志向のうちに見いだし、それをルソーの読み直しによって論証しようとする。この部分もとてもスリリングだ。


 まあ、一冊の本におさめようとするのが無理なくらい、いろいろなことを詰め込んだ本である。その意味でたいへんな本ではあるが、メッセージは明快であると思う。