セリーヌ・ディオン

 家を整理していたら、セリーヌ・ディオンのFrench AlbumというタイトルのCDが出てきた。彼女がまだ「ケベックの歌姫」と呼ばれ、英語の歌で大活躍する前のアルバムだ。


 このCD、フランスに行く前に買った物で、そのころは「フランス語の歌って、こんな感じか」ととくにどうとも思わなかった。が、今回聞いてみて、ちょっと驚いたことに、まったくフランス語の歌に聞こえないのである。まあ、僕もたいしてフランス語の歌を聞いたわけではないが、それでも、「これはフランス語の歌とは違う!」と思ってしまったのだ。


 なんというか、歌詞こそフランス語なのだが、それ以外は完全にアメリカン・ポップスなのである。妙に滑舌がよく、音質がクリアというか。上手く言えないが、フランス語の歌特有の「語り」がないというか。


 反面、セリーヌ・ディオンというと、どうしても「タイタニック」の印象が強く、朗々と歌う人というイメージがあったが、フランス語の歌のときの方が、微妙なニュアンスや遊び心のようなものが感じられた。


 なるほど、セリーヌ・ディオンは、ケベックという、生活や音楽の基本的感覚は完全にアメリカナイズされつつも、それでもフランス語を話しフランス語で暮らしている地域出身の人なのだなあ、とあらためて感じた。英語化する世界のなかでのフランス語のあり方として、面白いと思う。