政治思想学会

 政治思想学会初日。午前のテーマは「ティラニー」。僭主政、暴政、圧政等々訳されるギリシア以来の伝統的な概念である。報告も一方で古代ギリシア研究の視点から、他方でこの概念を現代に甦らせた一人、ハンナ・アーレントの視点から、探っていく。いわばこの概念の起源と末端から考察するというもの。好企画である。が、途中から見た印象で何だけど、うまく間がつながらなかった、という感じかな。


 午後は主権国家と帝国の概念をめぐって。マキアヴェッリグロチウスの視点とともに、清朝という東アジアの視点から迫るというもの。いずれも力のこもった報告だったが、やはり話として新鮮だったのが清朝をめぐる報告。よくある清朝を最後の中華帝国とした上で、それと「西洋の衝撃」の対比を描く議論を批判し、清朝は最初から多民族非中華帝国であり、むしろ途中から台頭してきた漢人知識人たちが、この清朝の巨大な版図と儒学的教養とを整合的に説明するために、疑似主権国家論的な議論を展開していたと指摘する。中国史の叙述図式そのものを見直す意欲的な報告だったと思う。


 明日の午前の自由論題。僕はその司会である。朝九時スタートということ。遅れないようにさっさと寝よう。