サイエンス・ライター

 福岡伸一生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)を読む。内田樹がオビに推薦文を書いているが、たしかにおもしろい。ワトソンとクリックのDNAの二重らせんの発見をめぐって、こんなドラマがあったとは。一つの大発見は、それに先立つさまざまな小さな発見を前提にしている。最後のブレークスルーは、ささいなきっかけから起こるが、しかし、そのささいなきっかけは、「準備された精神」(プリペアド・マインド)にしかほほえまない。う〜む、なんだか身につまされるのだ。


 最近、優れたサイエンス・ライターが日本にも増えているようだ。そういえば、昔スティーブン・グールドの『ワンダフル・ライフ』を読んだことを思い出す。当時、仲の良かった医学部の学生と夜通し飲んだとき、彼がさかんに薦めてくれた本である。読んでみて、たしかに目からうろこな本であった。進化論って、こんなに深い話だったんだ。あんまり感動したので、その当時書いていた本の冒頭に、唐突に進化論の話を挿入してしまったほどだ(今読んでみると実に唐突で、本を読みにくくしているのだが、、、)。


 池谷裕二という人の本もたしかに面白いな。いやはや、たいしたものである。文系で、こういう具合にはいかないものだろうか。研究の最先端をわかりやすく紹介し、しかも読み物として抜群に面白いというような、、、無理かなあ。