左翼

 今時の学生さんには、社会科学の基本的な用語がそもそも通じない、という話をよく耳にする。その例としてしばしばあげられるのが左翼と右翼で、これがどうも彼らにはぴんと来ないという。まあ、無理もない話だと思うが。


 もちろん、このような区分法そのものが現在では無効である、という考えも成り立つが、僕自身は、と言えば、いまなお、この区分法はある種のリアリティを持っていると感じている。


 それはともかくとして、いったいどのように説明するか。フランス革命の際の議会内の座席の位置から生じた、という歴史的説明もよくなされるけど、そんなこと言われたって、ねえ。で、今日はこんな風に説明した。


 フランス革命以後の時代に生まれた理念の一つが、この社会は、より良い制度や仕組みを生み出すことで、自分たち自身の力によって変えていくことができるという社会変革の理念であり(A)、これと、社会には様々な不公正が存在するという認識とそれへの憤り(B)が加わると(A+B)、左翼になる。ナイーブだし、不正確な説明とは思うが、まあ、ある意味わかりやすいのではないか。


 問題はAにせよ、Bにせよ、それだけとってみると、「悪くないじゃん」と思うのだが、それではなぜ左翼という理念が現在影響力を失ってしまったのか、ということである。おそらくAの理念は、その後の歴史のなかで決定的にダメージを受けてしまったのだろう。さらにBについても、不公正への憤りはあっても、だからといってそれを自分たちで変えていけるとも思えないし、むしろ「自分とは関係ない」と思ってしまうのではないか、などという話をぽつぽつした。しかしながら、そういう理念を失ってしまうということは、何を意味するのか、というような話もした。


 学生さんたちは「ふ〜ん」と聞いていた。まあ、どう思ったかは知らないけど。