中国の政治的言説の状況

 職場の研究会で、中国の気鋭の政治思想史研究者S先生にご報告いただく。う〜む、しかし、なんとも要約や安易なコメントを許さない、かなり激しい報告であった。おそらくS先生は、現在の中国の矛盾にみちた政治や社会の状況を分析するにたる思想的言語の欠如に、かなりの危機的意識を持っているのだろう。そしてその危機意識が向けられる対象は実に多様であり、ある意味、あまりに多くの敵に対し同時に戦線布告するその言葉もまた、矛盾にみちたものとなる。


 いいにつけ、悪いにつけ、思想的陣営とその用語とがかなりの程度固定的な日本と比べ、中国における思想的地図はいまや大きな混乱と再編の時期を迎えているようだ。都市と農村、国民国家としての自己意識、市場主義、アメリカ流の政治科学、、、その混沌の中からいったい何が生まれてくるのか。恐ろしくもある。