子供の脳

 昔、Daichiが生まれる前に、もし子供が生まれたら、どんなことを教えるか、考えたことがある。さすがに、母国語であるフランス語の前にラテン語を子供に教えようとしたモンテーニュ父親や、功利主義の思想体系をもっとも合理的に子供にたたきこもうとしたジョン=スチュアート・ミルの父親のようなことは考えなかったが、それでも百人一首などを通じて、和歌をはじめとする古典に親しんでもらいたいな、なんてことは、ちょっとは考えたことを白状しなければならない。


 が、である。現実にはまったくそうはなっていない。百人一首は買ってあるが、いまだに一度も箱を開けていない。そもそも、考えてみると、自分自身満足に知っている歌がほとんどないことに気づいた。これじゃあ、親がまず勉強しないといけない。


 親が呆然としているうちに、Daichiは自分でいろいろ勉強をはじめたようだ。いまや、ウルトラマンの仲間たちの名を50人近くあげられるようになった(そんなにいたんだ!)。あと前にドラえもんのイベントに行ったとき、ドラえもん日本旅行ゲームという、(紙切れ一枚の)すごろくのようなものを買ってきたのだが、おかげで「名古屋は金鯱」、「鹿児島といえば西郷どん」などとすらすら言えるようになっている(そもそも名古屋にも鹿児島にも行ってないではないか!、それに金鯱とか西郷どん、って何だか知ってるのか?)。


 今なら、まだ柔らかい脳にきっといろんな知識を入れられるんだな、と、A-sanと二人でうらやましがっている。きっと、次はムシキングだな。虫の名前をたくさんおぼえるんだろうな、やだな。