笑い

 釜石での講演会であるが、印象的だったのは、報告者の皆さんが、実に芸達者だったことだ。おかげで最初は堅い雰囲気だったのが、途中から笑いが絶えなくなった。


 自分の反省になるのだが、教壇に立った最初の頃は必死になって笑いのネタを考えていたのが、次第に面倒くさくなり、とくに無理して笑いをとろうとは思わなくなってしまった。たんたんとしゃべって、何かの弾みにちょっと笑いがおこる、あるいはニヤッとする、まあそんなものである。結婚式のスピーチなどでも、前は、もっと必死に笑いをとろうとしたものだけど、、、


 今回聞いていて感心したのは、いろんな笑いの取り方があるものだな、ということだった。司会のGさんはアドリブで、各報告者のつっこみをいれるが、それが絶妙であった。彼があるとき「自分は司会の方が得意」といっていたのもなるほど、である。まあ、こういうつっこみやぼけによる、関係性の妙による笑いがある。それ以外に感心したのはベテランのN先生。この人のしゃべりはけっして軽妙ではない。むしろぎつばたした感じがしないわけでもないのだが、ともかく間の取り方が絶妙である。言葉につまったような沈黙が、聞いている側に「あれ?」と思わせ、その上で次にぽつりとくる一言が笑いをとる。それがきわめて巧みであり、なるほど話芸とはこういうものか、と思った。が、あとでこの先生に話しを聞くと、講演の原稿はすべて2週間前に書き上げられ、しばらく寝かされたものだという。笑いのつぼもすべて準備段階でしこまれている。この先生、年間、20回以上講演をするということであるが、そういう準備に裏付けられていることに驚かされた。そういえば、学部生・院生時代にお世話になったある先生も、きわめて講義がお上手であったが、すべて笑いのポイントは講義ノートに書かれたもので、アドリブは一切ないとおっしゃっていた。


 天性のアドリブの才能があるわけでもなく、かといって2週間前から笑いのネタを仕込むほど勤勉ではない僕は、いったいどうしたものだろうか。