中世哲学

 今日は家にこもって試験の採点。思想系の出題であり、しかも大問二つ。400名以上の受験者となると、採点はかなり大変だ。


 合間に読んだのが山内志朗さんの『天使の記号学』(岩波書店)。この山内さん、昔『普遍論争』という本を読んだ。中世ヨーロッパ思想史の専門家で、いわゆる唯名論実念論(個物が先が概念が先かってやつですね)をめぐる議論について、あざやかに切りさばいた人だ。今度の本は、そのような中世ヨーロッパの議論を援用して、現代日本の精神状況を読み解いたもの。これって結構名著じゃないかな。あいかわらず鮮やかな議論で、一気に読み通す。宮台真司桜井亜美、松浦理恵子まで参考文献にあがっているのはさすが(そういえば『親指P』って昔読んだな)。


 夕方、近所の本屋に行くと、新刊コーナーに、その山内さんの『<つまづき>のなかの哲学』(NHKブックス)を見つける。この著者の論理からいって「希望」の問題を論じることができるな、と思っていたら、なんとほんとに「つまづき」と「希望」の問題について論じている。


 でも、なんというか、この新刊の本はいまひとつ感心しなかった。やはり、この方、中世哲学の話をされている方が良さが出ると思うのだけど、、、