『<近代の超克>論』

 前からやっている仕事が最終段階である。このブログでもなんどか、もうそろそろ終わる、と書いていてなんであるけど、今度こそほんとうに最終段階である。


 そのかたわら、正月の惰性で、とりとめのない読書を続けている。須賀敦子については、現在河出から全集が文庫化されているので、とりあえずそのうちの書評などを集めてきた巻を買ってきて読む。解説の中井久夫阪神間文化論もおもしろい。


 それから広松渉の『<近代の超克>論』(講談社学術文庫)。広松の書いたもののうち、マルクス主義関係は何冊か読んだことがある。実にあたまの緻密な人であり、ごちゃごちゃした話をすとんすとんと、きれいに切り分けて説明してくれるという印象があった。反面、話は精密だけど、読んでいてわくわくするタイプじゃないなあ、というのが正直なところ。が、この『<近代の超克>論』は、副題に「昭和思想史への一視角」とあるように、例の「近代の超克」の座談会を中心に思想史的な議論を展開しているのだが、これが実におもしろい。この座談会、なんだか焦点がぼやけていて、何がけっきょくポイントなのか、これまでどうもよくわからなかった。が、広松のこの本を読んで、はじめて議論の筋が見えてきた気がする。う〜む。やはり広松はすごい人だな。それから、この座談会、きちんと考え直す必要があるなと、あらためて感じた。


 そこからの連想というわけじゃないけど、米谷匡史さんの『アジア/日本』(岩波書店)も、まだ読んでいなかった。今度ちゃんと読んでみよう。