9月11日

 またまた9月11日がやってきた。去年の9月11日も、それはそれで衝撃であり、今後さらに問題になっていくはずだが、やはり9・11といえば、2001年の9月11日であろう。


 あのとき僕はパリにいた。今日A-sanと話していて思い出したが、あのときA-sanはロンドンに滞在中であった。さらに言えば、義理の父母はアメリカにいた(西海岸だったけど)。ずいぶんと国際的だなあ、と意味不明に感心してしまう。が、それはともかく、外国にいた分、余計に不安を感じたのは間違いない(しかも、その当時、次のテロの対象となる場所としてロンドンやパリの可能性もささやかれていた)。


 あの漠然とした不安感、重苦しいような空気、でありながら、世界がどうなっていくのか、もうぜんぜんわからん、というある種の虚無感。その日の夕方、近所の友人だったSさんと、アパルトマンの前のこぢんまりとしたアイリッシュ・バーで、ぼそぼそと「たいへんな時代に入った日として、今日の日付は記憶されるんでしょうねえ」と話したのを思い出す。


 その後の5年はいったい何だったのだろうか。やはり「たいへんな時代」に入ってしまったんだろうな、と思いつつ、今ひとつぴんと来ないでいる。なんとなくリアルに感じられるのは、あの不安感、重苦しい空気、そして虚無感の記憶ばかりである。